MESSAGEは弊社代表の太田和隆が社員に向けたメッセージを社外向けに加筆してみなさまに読んでいただくコラムです。
ダイヤ冷ケースの仕事に対する考え方を感じてもらえれば幸いです。

感動の中にある健全なスピリット

1月28日に大阪国際女子マラソンが行われました。日本陸連は東京オリンピックに向けてマラソン強化の責任者の瀬古利彦さんの方針のもと、わかりやすい選考方法を行なうようです。来年9月以降に行なわれるオリンピック出場選手決定レース(マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)というそうです)の出場資格を手に入れるためのレースを指定し、そこでの基準タイムを明示しました。出場を目指す選手は、まずはどの大会でどの程度のタイムを目標にすればいいのかが明確で、観戦する私たちにも見応えのあるものとなるわけです。きっと来年9月の最終選考レースは大きな注目を集めることとなり、今から楽しみでもあります。今回の大阪国際女子マラソンはそのMGCへの出場権がかかる指定のレースとなっており、多くのランナーがエントリーしました。結果は松田瑞生さんという腹筋がやたらとすごい22歳のチャキチャキで元気バリバリの大阪のオネエチャンという感じの選手が好タイムで優勝してMGC出場権を手に入れました。42km余りを2時間22分で走りきるのですから、何よりも素質があり、その上に過酷なトレーニングを重ねることのできる体力と気力、コーチの指導を信じる素直さ、自分に負けない強靭な精神力などが身についていないとならないと思います。

 ご存じのとおり、マラソンのトップランナーはレースの途中で水分とエネルギーの補給のために自分専用のスペシャルドリンクが準備されていますが、走りながらあのようなボトルをしっかりつかみ取るのはなかなかむずかしいのです(超スローな市民ランナーですら、走りながらコップをきちんとキャッチするのはたいへんなんです。だから周りに迷惑にかけなようにという言い訳をしながら、ゆっくり歩いて水を飲みながら一休みするのです)。先頭を松田選手と争う選手が、このスペシャルドリンクをつかみ損ねた場面がありました。

レース後半、これからますます厳しくなるこの時点で補給ができないのは大きな痛手です。すると松田選手は自分のドリンクボトルをその選手に手渡したのです。テレビ解説の増田明美さんが思わず「松田さんすごい。まるで陸王ですね!」と声を大きくしました。

 昨年大ヒットしたテレビドラマ「陸王」の最終回で、竹内涼真さん演じる茂木選手がドリンクを取り損ねたライバルの毛塚選手にボトルを差出すというやたらかっこいいシーンがあったのですが、増田さんはそれを思い出しての一言でした。しかし陸王はTBS、マラソン中継はフジサンケイでした。隣で見ていたうちの奥さんが「他局、他局!」と叫んだのが聞こえたのかどうかはわかりませんが、その後、増田明美さんから「陸王」の言葉は出てきませんでした。まあこれはどうでもいいことですが。

 その後、松田選手は他のランナーを引き離し見事に優勝のゴールテープを切りました。オリンピックを目指す選手が、少しでも自らの勝利への条件をよくしていきたいと思うのはごく自然な気持ちだと思います。あの場面でライバルの選手がドリンクを取り損ねたことは松田選手に関係ないことです。自分のボトルを渡さなくても非難されることなど無いはずです。しかし松田選手は自分のボトルを手渡しました。それがもとでライバルに負けるようなことにならないだろうか、という不安がなかったのかなと余計なことを考えたりします。おそらく松田選手は水分補給できなかった選手に勝つより、補給して力を出し切れたライバルに競り勝つことに大きな価値を感じたのだと思います。

 真の一流選手には技術や体力だけでなく、それを支える健全な精神があるのですね。誰もが共感できるスピリットを少しでも見習っていきたいと思います。

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