MESSAGEは弊社代表の太田和隆が社員に向けたメッセージを社外向けに加筆してみなさまに読んでいただくコラムです。
ダイヤ冷ケースの仕事に対する考え方を感じてもらえれば幸いです。

織田元空将のお話から考える

ブルーインパルス

 かつて航空自衛隊で空将を務められた織田邦男さんのお話を聴く機会に恵まれました。普段、私たちがなかなか知り得ない自衛隊の実際や国防の実態について興味深く聴かせていただきました。織田氏が現役のパイロットだった時は、当時のソ連の戦闘機が日本の領空を侵犯するのを防ぐために数百回のスクランブルをおこなったそうです。指示が出ると、5分以内に離陸しなければなりません。夜間は装備を身につけたまま仮眠し、合図があれば、飛び起き、指示の内容を確認しながら、猛ダッシュで戦闘機に乗り込み、整備士と連携してエンジンをスタートさせ、共に飛び立つ僚機の様子も見ながら、3分50秒で滑走路を離れる、というまさに離れ業の連続で日本の安全を守っていたとのことです。

 この70年間、航空自衛隊はいつでも命がけの出撃ができるように毎日厳しいトレーニングを重ねています。パイロットの資格を取得するのに3年ほど、さらに5年ほどの訓練を受けて、トップパイロットになる年齢は30歳くらいだそうです。映画「トップガン」や「トップガンマーベリック」を見た方はイメージできると思うのですが、超高速の飛行や旋回時には6G、時には9Gの重力がカラダにかかってきますので、その訓練は過酷を極めます。これに人間の肉体が耐えられるのはせいぜい10年が限度であり、40歳くらいで第一線を後進に引き継いでいくのだそうです。これを繰り返して70年間経つわけですが、この間に幸いにも実戦になったことはありません。

 プロスポーツ選手であれば、厳しいトレーニングを積んで技量や体力を上げ、試合という舞台でその成果を披露し競い合う場があります。しかし自衛隊の隊員さんは、まさに命懸けの訓練を日々行ないながら、「この汗、無駄なれ」と願っているとのこと。国を守るとは、なんと理不尽で矛盾にあふれた努力なのだろうと感じます。訓練の成果は、その技量を披露して賞賛されることではなく、その技量・技術を実際に発揮する機会が無いことなのです。命懸けで流した汗が無駄になることが最大の成果なのです。

 現在、ロシアとウクライナの戦争が継続していますが、そもそもソ連崩壊と同時にウクライナが1991年に独立した時は核を保有していました。しかし国際的圧力によって核放棄しないと経済支援を受けにくくなるとの判断から、ロシア、アメリカ、イギリスとのブタペスト覚書に同意しました。この3か国がウクライナの安全を保障する代わりに核を放棄するという約束に署名したのです。しかし2014年のロシアから難癖をつけられてクリミア半島を併合され、2022年に今の侵略戦争を仕掛けられて今日に至ります。

 大国はその力を背景にして、自国に都合の悪い約束事など屁理屈で捻じ曲げて、弱い相手に戦争を仕掛けることがあります。しかし核をもつ強い相手には仕掛けません。また核は使用されないであろう兵器ではありますが、持たない国に対しての威嚇・恫喝にはものすごい力を発揮します。

 日本は今、日米同盟によりアメリカの核の傘の下にいるので、他国から簡単に戦争をしかけられることはないかもしれません。しかし隣国であるロシア、中国、北朝鮮の不穏さは年々増してきています。この先、いざという時に、アメリカは自国を犠牲にしてまで、日本を守ってくれるのでしょうか。自らを守り抜く力を付けなければならない時代がそこまで迫ってきているように感じます。

 織田氏の話を聴いて、自衛隊の活動の上に今の日本の平和があることへの感謝、そして国民の一人として安全保障を考えることの重要性を感じずにはいられません。

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