今春に当社の理念を見直し「理念手帳」にまとめてみなさんに配布しました。時々、ページをめくりながら読み返しますが、当たり前のことが並べられているなあ、と改めて感じます。同時に当たり前を当たり前に行動するむずかしさやたいへんさを感じます。
行動指針の冒頭に「気くばり・目くばり・心くばり」の3くばりを掲げていますが、やはりこれはとても大切なんだと感じます。一台一台異なる仕様のショーケースを高品質に作り上げ、お客様のお届けすることは本当にたいへんなことです。私たちはショーケースだけを専門に作ります。それ以外のものはほとんど作りません。お客様と詳細な打ち合わせをします。設計に取り掛かる前に事前に社内ミーティングを行ないます。製造現場においても終礼などを通じて情報交換や確認も行ないます。それでいながら完璧な承認図も、完璧な製作図も、完璧な製造も成し遂げられません。かなりいいものが出来上がったとしても、やはり反省すべき点は多々残ります。
それでも少しでも高い品質の製品に仕上げていくためには、お互いの目くばり・気くばりが欠かせません。仕事の基本は自ら担当する職務をきちんとやることです。当然です。でもそれで「私の責任範囲は終わった」とはいきません。作業をしていて「これで本当にお客様に快適に使ってもらえるのかな?」という疑問や違和感を感じたなら、それを提起して、相談して全体最適の解を導くことで品質を向上させていくように、各自の気づきと対処が重要なポイントになります。
さらにそういう相談を気軽に行なえるような「場」を作り出す心くばりも重要です。特に年長者や経験の長い人は、周りの人の仕事をやりやすくしモチベーションを促進するような行動や言動、つまり高品質と効率を追求する厳しさと成長を願う優しさが心くばりではないかと思います。
また今月は「資源」についても考えてもらいました。まずは原材料の無駄を無くしていこうという内容は多くのみなさんが意見として述べられました。昨今、材料をはじめ全てのもののコストが激上がりです。細かい工夫の積み重ねで無駄を減少させることがとても重要になっています。
時間も重要な資源です。ミスややり直しでの時間のロスを無くすために、よりよい準備に注目しなくてはなりません。また自分の原因で他の人が時間ロスをしないためにどうするかを配慮しないといけない、という意見も寄せられました。思わずうなずきました。
最大の資源は「人」だと思います。仕事は一人ではできません。以下はみなさんからの回答の要約です。「最大の資源はお客様であり、仕入先のみなさんであり、社内の仲間であり、そして家族であり、このような人たちに支えられて、自分は仕事ができ、生活を送ることができる。その「資源」に気づくと感謝の気持ちが一層強くなるように思います」。
そして現実的に仕事をし、会社の活動を継続し、私たちの生活を支えるには「粗利」の確保が欠かせません。まさに「論語と算盤」のソロバンの重要性です。中小企業は基本的に「低価格戦略」はできませんから、高品質の製品やサービスを適正価格でお買い上げいただけるように努力しなくてはなりません。買い手の視点からしても「安いものがほしいのではない、よいものがほしいのだ」ということばに真理はあると思います。
最終的に適正利益を確保するには、「ショーケースの前の笑顔のために」高品質な商品を作らねばなりません。そのために理念体系を行動にむすびつけ、「利益」という通信簿をよりよくしていかねばならないのです。