MESSAGEは弊社代表の太田和隆が社員に向けたメッセージを社外向けに加筆してみなさまに読んでいただくコラムです。
ダイヤ冷ケースの仕事に対する考え方を感じてもらえれば幸いです。

『慎独』ということば

毎週のみなさんからの回答を読んでいると時折ドキッとさせられることがあります。「相手によって態度が変わる人」「人が見ているときと見ていないときで態度が変わる人」は信用できない、という意見がありました。

 なるほど、自分もそういうところがあるかもなと反省させられます。そのような意見からふと頭によみがえってくるのは「慎独」という言葉です。私はこの言葉を中條高徳さんから教えていただきました。中條さんは陸軍士官学校に入学し、戦後は夕日ビールと揶揄されたアサヒビールで指揮を執り、スーパードライを大ヒットさせて、キリン一強のビール業界でアサヒを復活させた立役者です。陸軍士官学校というのは心身ともに健康であり、尚且つ学業が現在の東大以上に優秀でなければ入学できない当時の超エリート校です。在学中に終戦を迎え、価値観の大転換期を乗り越えて、ビジネスという実業の道で大きな成果を残されました。

 中條氏の書籍や講演、一度事務所にお訪ねし直接お聞きしたお話などから、たくさんのことを学びましたが、中でも「慎独」という言葉については今でも忘れることができません。その意味は文字のごとく、ひとりでいる時こそ自らの行動を慎め、というものです。人は誰も見ていないところでは気を抜いてしまうものですが、そのだらしない姿を知っている人が2人います。一人は全知全能の神様、そしてもう一人が「自分」です。他人はごまかせても、自分は絶対にごまかせない。独りの時に自分の態度を慎める人はどんな時にも正しくブレない姿勢でいることができる。そしてそのような姿勢が信頼を勝ち取ることができるというものです。

 このような話をすると「そんな古い時代のことを・・」と顔をしかめる人がいるかもしれません。不易流行という言葉がありますが、世の中は常に変化しながら、その底流には変わらぬ「不易」なものがあるのです。日本という国は有史以来、他国に侵略されることなく、独自の歴史の中で文化を育んできました。徳川時代に日本を訪れ江戸の町を見た西洋人が驚いたそうです。当時の巨大都市であった江戸の町の清潔さ、治安のよさが他に類を見ないレベルだったからです。それの基礎となっていたのは教育水準の高さでした。誰もが文字を読み書きでき、ルールを守ることの大切さを大人が子供にしっかり教えたのです。その中に「慎独」という考えも含まれていました。そのような文化風土がベースとなった国民性が継承され、明治時代の日露戦争では世界史上初めて有色人種が白人に勝利するという「奇跡」を起こし、やがてアジアを制覇するのではないかという危機感を感じたアメリカが日本を第二次大戦に引きずり込んで、徹底的に叩きのめしました。再び日本がアメリカの世界覇権の脅威にならないように物的にも精神的にも日本を破壊し、戦後は新たな憲法を押しつけ、教育制度を変更させました。それほど「慎独」を重んじる勤勉で優秀な日本人が脅威に感じたのだと思います。戦後のアメリカによる教育改革で、古くは聖徳太子の十七条憲法の「和を以って貴しと為す」、明治天皇の「教育勅語」の考え方は姿を消し、「修身」の教育科目も無くなりました。

 今後の歴史教科書から聖徳太子の記述も無くなるそうで、本来の日本人の強みの伝承がどんどん難しくなっていくような気がします。石油や希少鉱物に代表される天然資源が無いわが国の唯一の資源は「人」だったはずです。その勤勉で探求心に富み、受け継がれてきた国民性のひとつの表れが「慎独」だと思うのです。そのような歴史を振り返りながら、誰が見ていようと、あるいは見ていなくても、自らの行動が他の人の信頼を得られるようにしていきたいものです。

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