毎週みなさんから理念と経営誌を題材にした設問からの回答をもらっていますが、先日「人間力」に関して下記のようなコメントがありました。
「会長が『挨拶をしっかりしよう』とか社長が『しっかり環境整備をして工場をきれいにしよう』といつも言っているけど、何で同じことばかり言っているのだろう。職場なんだから仕事をしっかりやればいいじゃないかと思っていました。しかし最近その意味がだんだんわかるような気がしてきました」という概要です。
思い返せば、私も新入社員だったころ、同じようなことを思っていました。仕事さえがっちりやれば、それ以外のことはそれなりでいいじゃないかと。しかし挨拶や環境整備は当然として、仲間に対して目くばり・気くばり・心くばりや、後工程の人ができるだけ仕事をしやすくするような配慮、チームワークを大切にする気遣いなど、人として恥ずかしくないような行動を習慣化することの大切さがわかるまで、かなりの時間を要しました。人としての成長が遅かったなあと感じます。この大切さを早く気づいたほうが、まちがいなく仕事は楽しくなり、人間関係は豊かになり、幸せな人生を歩むことができると思いま す。しかしこれに気づくことがなんとむずかしいことか。
前月はWBCについて書きましたが、まさに大谷選手の大会といって過言ではないでしょう。今回は大谷選手が高校1年生の時に立てた目標達成表を知ってもらいたいと思います。下の81個のマス目に分かれた表です。
中心のマス目が達成すべき大目標で「8球団からドラフト1位指名を受ける」と掲げています。それを達成するための8つの具体的項目を挙げ、それぞれをさらに細分化していき、具体的な行動目標に落とし込んでいくというものです。その8つの具体的項目には「コントロール」「スピード」「変化球」などという5つの野球の技術項目(仕事)のほかに「運」「メンタル」「人間性」を挙げています。
「運」の細分化項目には、あいさつ・ゴミ拾い・読書・道具を大切にする等があります。運を呼び込むためにはこのようなことが必要であると表現されているのです。
「人間性」には、思いやり・礼儀・感謝などを、メンタルには、仲間を思いやる気持ちを挙げています。
わずか16歳の高校1年生が一流の野球選手を目指すには、野球の技術のほかにこれらの重要性をすでに気づいていたということです。
野村監督の記事を繰り返し設問にも取り上げますが、そのポイントは「人間力」という土台の上に「野球の技術」が構築されていくことで一流のトップアスリートとなり、引退後もよい仕事に恵まれていくと豊かな人生を作っていくと述べられています。
私たちも担当する職務により高めるべき技術はそれぞれですが、「運」「人間性」「メンタル」に関しては大谷選手と同じような成長目標の大切さをもう一度正しく理解していくことが必要ではないかと思います。